井筒屋 IZUTSUYA

きたきゅうコロンブス

小倉井筒屋 本館6階

Discovery

作り手の思いや、商品へのこだわりをご紹介!

Vol.1 うつわ つなぎ

陶芸一筋の夫婦が
縁を大事にしながら二人三脚で作る
こだわりのうつわと置物

作家として、夫婦として歩んできた道のり

シンプルな形のうつわに手を伸ばすと、イメージよりも軽いことにちょっと驚いてしまいました。「うちのうつわは陶器だけど軽くて薄いから、使い勝手がいいとお客さまにも喜ばれているんですよ」。笑顔で教えてくれたのは、「うつわ つなぎ」の店主・松下広樹さん、紗英子さん夫妻です。

北九州市出身の広樹さんと宮崎県出身の紗英子さんが出会ったのは、九州産業大学 芸術学部の陶芸コース(現・工芸デザイン専攻)。3つ歳の違う2人が、広い学び舎で顔を合わせるようになったのは、有田焼を代表する陶芸家・14代目 酒井田柿右衛門氏が同大学で指揮を執った、文部科学省が支援する国のプロジェクトでした。「このプロジェクトで助け合ううちに、お互いの人間性を深く知ることになって。何より作りたいものが似ていたので、自然と“いつか一緒に作品を作りたい”と思うようになりました」

晴れて夫婦となり、2009年に夫の故郷でスタートした2人のうつわ作り。2017年に戸畑区にある「cobaco tobata(コバコ トバタ)」内に店を構えるまでの8年間は、1つのうつわを合作することが多かったそうです。「でも、次第にそれぞれ作りたいものが見えてきて…。お互い作家として自分のスタイルを意識するようになったんでしょうね」と紗英子さん。現在は食器、酒器、花器などのうつわ全般の制作は広樹さん。縁起物を中心に、季節を感じさせる置物、日用雑貨の制作を紗英子さんが担当しています。

広樹さんが作る、こだわりのうつわ

装飾しすぎず、無駄をそぎ落とし、色と形にこだわったシンプルなうつわ。学生時代、酒井田柿右衛門氏にも褒められたというこの作風は、広樹さんの創作活動を支える、ゆるぎない基盤です。「自分が納得できる器だけを作っていきたい。流行に惑わされず、信念に基づく制作ができているのは、酒井田先生の影響が大きいと思います」。

そんな職人肌の広樹さんが作る器は、全て手作業です。一つ一つ、型を使わずに成形するため、微妙にサイズや見え感が異なる、まさに一点物。釉薬も機械ではなく口での「吹き掛け」を行っています。「楽をする方法はいくらでもあるのでしょうが、それを選ぶと僕たちの良さがなくなってしまう。アナログな作業も、陶芸が好きだからやれるのかな」。言葉や行動の端々から、実直な性格が伝わります。

もちろん色にもこだわっています。「色は難しくて、狙ってできるものではありません。土、釉薬の濃度、器の厚さ、薄さ…いろんな要因ですぐに変わってしまいます。少し前までは藁灰や織部釉を混ぜ合わせ、ブルー系の涼やかな色を作っていましたが、今は仏像の雰囲気、鉄瓶の質感を連想させる色を完成させ、(普賢菩薩に因み)「普賢」と名付けました。実はこの色、去年井筒屋さんで販売したとき、はじめてお披露目した色なんですよ」とにっこり。重厚感のある色味はとってもモダンで、存在感も抜群。どんな料理にも映えると、お客さんの評判も上々です。

神話や歴史からインスパイアされた置物作り

一方、紗英子さんの名刺には「置物作家」という肩書きが記されています。紗英子さんの故郷、宮崎県は「日本神話発祥の地」ということもあり、昔から神話にまつわる場所や物語を身近に感じていたそうです。「日本古来のしきたりや暦、伝統行事、祭り、神様への思い…そうした日本人の心の中にあるもの、大切にしてきたものを形にしたいと思ったのは、自然な流れだったのかもしれません」。

亥年にちなんだ「和気清麻呂公と猪」(小倉北区の足立妙見宮の歴史をベースに作成)や、日本の神話シリーズとして「天神様」の置物、節分にちなんだ「鬼とおかめ(お多福)」、小さな「つなぎ雛」。どれも手のひらサイズのコロンとしたフォルム、可愛らしい表情が魅力的で、紗英子さん独特のセンスが光るものばかり。そして各作品には、紗英子さんが神話や歴史を深く学び、そこからインスピレーションを受けたことが分かる、丁寧な説明書きが添えられています。

「天神様の置物を複数購入してくれたお客さまがいて。理由をお尋ねしたら、我が子にお守りとして持たせたら受験に合格したので、お友達にも配ると言ってくださったんです」。自分の作品が誰かの役に立ち、人を介してつながっていく。店名に込めた「人と人を、うつわがつないでくれますように」という願いは少しずつ、着実に実を結んでいます。

なお、置物は見た目の可愛らしさとは裏腹に、1230℃の窯で本焼きをした、しっかりした作り。海、山、川、神社仏閣、美術館に博物館、さまざま行事などに出かけて五感を鍛えながら、これからも紗英子さんの心に響いたもの、感じたものを表現していきます。

作品に一連の想いを託す

学生時代から(なんと広樹さんは高校でも陶芸部に所属!)陶芸に打ち込んできた2人に、今後の夢を尋ねてみました。すると広樹さんは「淡々と陶芸ができていたら幸せかな」と根っからの職人発言。続けて「そろそろ公募展にも挑戦してみたいですね」とも。そのために、愚直に技術を磨く広樹さんの姿が目に浮かびます。

一方、紗英子さんからは「写真を撮りたいですね」と、ちょっと変化球な発言が。「私、料理が好きで、さらに土も好きなので、市民農園を借りて野菜を作っているんです。自分で育てた野菜を使って料理を作り、夫の作ったうつわに盛りつける…暮らしの中の一部を写真で表現することで、一連の想いを形にしたいんです」。一つの作品を合作することはなくなったけれど、広樹さんのうつわの良さを誰よりも知っている、紗英子さんならではの素敵な構想です。

日々の暮らしに欠かせないうつわ。だからこそ、生活に寄り添うものでないといけないし、時にうつわが、何気ない日々を豊かにする力を持っていることを「うつわ つなぎ」の作品は教えてくれます。きたきゅうコロンブスの店頭には、生活をちょっと楽しくする広樹さんのうつわと、紗英子さんの置物を展示販売しています。どうぞ直接手に取って、その魅力を確かめて下さい。

欲しい!

profile

松下広樹(1977年生まれ)、松下 紗英子(1980生まれ)。

2009年、小倉北区に「器工房 つなぎ」開窯
2017年、北九州市戸畑区に「うつわ つなぎ」開店
広樹氏は「第57回福岡県美術展覧会 西日本新聞社賞」
「第31回全国伝統的工芸品公募展(東京)入選」他、
紗英子氏は「第32回全国伝統的工芸品公募展(東京)入選」
「第39回宮崎県美術展 大賞」他、両氏ともに受賞多数。

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