
サステナブルピープル Vol.12
井筒屋グループは、企業の社会的責任を果たすべく、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献し、人々の豊かな未来と持続可能な(サステナブル)社会の実現を目指してまいります。本企画では、人と地域をつなぎ、豊かな未来を創造していくために、さまざまな業界のフロントランナーたちのお話を伺います。

株式会社味の兵四郎 代表取締役会長 兼 農業生産法人 株式会社兵四郎ファーム 代表取締役社長
野見山正煇(まさあき)さん
1951年生まれ、嘉穂郡庄内町出身(74歳)。立教大学経済学部を卒業後、証券会社に就職。29歳で福岡へ戻り食品販売会社に入社。営業や販売など様々なスキルを学び、36歳で「味の兵四郎」を設立。乾麺販売のほか、 あご(飛び魚)入りだしパックを開発し、百貨店での販売をスタート。現在、看板商品の「あご入兵四郎だし」は全国の百貨店およびスーパーで販売され人気を博しています。2015年、きれいな水が豊富に湧出する自然豊かな朝倉市に「兵四郎ファーム」を設立。農業という新たなステージで、お客様に安全・安心な作物を継続的に届けるための挑戦を続けています。
![]()
1988(昭和63)年の創業以来、日本独自の食文化を大切にしながら、味の決め手である基礎調味料を中心に、こだわりの味づくりに挑戦している「味の兵四郎」。社名の由来は、野見山社長の曽祖父・野見山万太郎氏が営んでいた「割烹料亭 兵四郎」の屋号から受け継いだものです。お客さまの「おいしい」という笑顔を生きがいにしていた祖父の思いを受け継ぎ、「食べる人も、つくる人も、笑顔になってほしい」が会社のモットー。だし素材をはじめ、麺、お茶、つゆ、酒などこだわりの商品を国内外に提供しています。
そんな「味の兵四郎」が11年前に農業部門を設立し、有機農法による安全・安心のお米づくりを行なっています。率先して汗をかき、様々な課題に直面しながらも、覚悟を持って農業に挑み続ける野見山社長に、農業人としての様々なお話を聞かせていただきました。

![]()
・・・農業生産法人「兵四郎ファーム」を立ち上げた経緯を教えてください。
2004(平成16)年に友人が育てた米を食べる機会があったのですが、その米がとてもおいしくて衝撃を受けました。作り方を聞いたら「農薬や化学肥料に頼らない有機農業で作った米で、このおいしさは自然の恵みから生まれる」ということを理路整然と語られました。友人は農家ではなく銀行員だったのですが、昔から環境問題に興味を持っていたそうです。「田んぼが傷んでいるのは河川に農薬が流れ込んでいるからだ」という考えから、朝倉にある実家の田んぼで農薬を使わず、微生物や菌の力を利用した土作りを実践し、その田んぼで米を作っていました。
有機農法で作った米はとても力強くて、うま味と甘みがあり、香りもいい。こんなにうまい米を味わえるのなら、自分もやってみたいと、その翌年には有機農業を始めました。でも社員は最初、猛反対です。「なぜ儲からない農業をやるんですか」って(笑)。でも、最終的には草取りや農作業を手伝ってくれましたね。ありがたいことです。
農業を始めて10年ほど経った2015(平成27)年に農業法人を立ち上げ、現在はファーム専属のスタッフ5名と2町の田んぼ(1町=約9917m2 サッカー場 約1面分相当)で米や大豆などを育てているほか、契約農家さんにも10町ほどの田んぼで米を作ってもらっています。

![]()
・・・有機栽培で作った「兵四郎米」はどんなお米ですか?
米は土作りから始まります。菌や微生物を活発に働かせ、虫などの小動物が生きられる環境を整えるのが大事です。3年ほどで良質な土壌になりましたが除草剤を使わないため、草が生えては刈る…の繰り返しです。非常に手間はかかりますが、収穫した米はそれに応えるように格別においしいです。最初に出会い、衝撃を受けた米の味がします。
有機農法を実践して驚いたのは、有機栽培で育てた米は台風の雨風の中でも倒れないし、力強く大地から伸び、ウンカなどの害虫被害がないこと。本当にすごいことです。栄養価も高いうえに、農薬を使わないから安心。やっぱり澄んだおいしさを感じますね。有機農法って、大変なのは雑草との戦いだけなんです。だから、この素晴らしさをより多くの農家さんに伝え、挑戦してもらいたいと願っています。
最高の状態でお客様に届けるために、新米を精米後すぐに酵素を抜いて製品化する「風味密封製法」を採用。酵素に触れることで進む劣化を最大限に防いだお米を、一年を通して販売しています。「兵四郎米」は炊いている時からお米本来の香りが立ち込め、炊きあがりにはふっくらツヤツヤ輝くお米です。
小倉井筒屋では2kgを本館7階〈サステナベース〉にて販売中。
画像左から
農薬・化学肥料不使用の兵四郎米
ヒノヒカリ 白米(5kg 8,640円、2kg 3,996円)
![]()
・・・米粉用の米「笑みたわわ」も作られていますが、これは品種開発から関わっているそうですね。
「味の兵四郎」の社長時代は海外にもよく行っており、その時から思っていたのですが、全世界の人たちを食べさせるための食料というのは不足しています。一方で日本国内の現状は米の需要が落ち、農業に携わる人の減少もあって、耕さない田畑が増えています。そして世界的には、小麦アレルギーの方が一定数いる…。こうした状況を踏まえ、ずっと「お米でパンを作れないだろうか」と考えていました。
友人が作ったおいしい米と出会い、有機農法で米作りをしようと思い立ったとき、同時に「温めていたアイデアを形にするのは今だ!」と思いました。農業法人を立ち上げてすぐ、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センターを訪ねました。そこで出会ったのが研究段階だった品種「羽919」です。
土壌を改良した私たちの田んぼで「羽919」を育てて米粉に加工したら、小麦に負けないふっくら感と、お米ならではの甘み、もっちり感が味わえる、すごい米粉になったんです。私が出会わなければ、「羽919」は廃盤になる恐れもあったらしいので、まさに運命の出会いでした。その後も改良を重ね、令和元年には農水省が固定種と認定。パン・菓子・料理用の新品種として、米粉専用米は「笑みたわわ」と命名しました。名前には「農薬、化学肥料不使用の安心でおいしいお米で、笑みがたわわに実りますように」という思いが込められています。このパンケーキミックスは、小麦アレルギーの方にもふっくらもちもちのパンケーキ、お菓子を手軽に楽しんでいただきたいと思い開発しました。

画像左から
「笑みたわわ」から生まれた米粉「パンケーキミックス」(220g1,512円)と、シチューや天ぷら、お好み焼き、ピザ、クッキーなどに使える「米粉」(500g1,620円)。
小倉井筒屋では本館7階〈サステナベース〉にて販売中。
井筒屋オンラインショッピングでも販売しています。詳しくはこちら
・・・「米粉100%のパン作り」は、すでに完成しているそうですね。
「笑みたわわ」の成功と同時にパン作りも進めたので、レシピは完成しています。でも次は「どこで焼いてもらうのか」という問題に直面しました。大きな企業や店舗などにも交渉しましたが、職人が変わるたびに微妙な調整を行う必要があることと、コストの問題などもありなかなかうまくいきません。だったら、自分たちで製造販売をしよう!ということになり、2026年内には店舗をオープンさせる予定です。
新店舗は「道の駅うきは」の近くにある古民家を再生し、店舗の前には微生物が生息する田んぼもあるんですよ。ここでは米粉パンを焼いて販売するだけでなく、お米の良さや有機農法の素晴らしさを伝えたいと思っています。
・・・明確なビジョンと強い覚悟、溢れる行動力で農業に取り組んでいる社長の、今後の夢や目標をお聞かせください。
農業に参入して以来、生産コストの高さや米の消費減少による収益悪化、跡継ぎ問題、人手不足など、農家の方が直面している様々な課題を実感しているところですが、まずは企業を経営する者として、「農業もこうすれば食べていける」というひとつの形を見せたいと思っています。
有機農法は収量が上がらないと思われているかもしれませんが、実は理にかなっており、やり方一つで全く変わります。一人でも多くの農家さんが有機農法にシフトしてもらうために、そうした方法や成功例を見せていくことが必要です。
ただ、農業は国策によって左右されるので、正直難しい面もあります。立ち向かう相手が大きすぎて「可能性」と「絶望」を繰り返し感じている日々ですが、状況が難しいほど燃えるんですね(笑)。家族にも「こんなに大変なのになんで農業を続けるの?」と言われますが、残された人生の中で「道標がある」というところまでは示したいと思っています。
・・・そんな野見山社長の背中を強く押しているのは、やはり揺るぎない“信念”のような気がします。
そうですね。今思えば「味の兵四郎」でアゴだしを完成させた時は、自分で言うのもなんですが最高傑作だと思いました(笑)。自信作だからこそ、迷いなく突っ走ることができたんでしょう。それにアゴだしは、最初に小倉井筒屋さんで取り扱ってもらったのがスタート。ここまで成長させてもらいましたから、私は井筒屋の方に足を向けて寝られません。
今回実践している有機農法や、同農法で作った米、その米で作った米粉やパン、どれも間違いなく素晴らしく、お客様に自信を持って提供できるものです。この米を使ってお酒も作っていますが、有機栽培の米は発酵状態から違います。杜氏も驚くほどで、米が素直だと言っていました。味もものすごく澄んでいて、香りも芳醇です。
生産者として良いものを作るのは当たり前ですが、その上で経営としてもきちんと成功例を見せることができれば、日本の農業ももう少し活性化できるんじゃないかな。そしてより多くの農家が有機農法に挑戦し、いま空いている畑をもっともっと耕していけば、「おごはん」は世界に持っていけると信じています。
・・・最後にお聞きします。野見山社長にとっての“サステナブル”とは何でしょうか。
「サステナブル」という言葉的には「循環」「継続する」ということですが、私もファームを「大きくする」というよりも「継続させたい」と思っています。そして浮羽にオープンさせる新店舗も古い民家を再生させていますし、代々繋がっていくような「循環」がとても大事な気がしています。畑自体も、菌や微生物、小動物などいろんなものが循環して土を作っていますしね。
いろんなお話をさせていただきましたが、私は農業に一縷の希望を持っています。悩み、ときには絶望もしながら(笑)、日本の農業を継続させるため、そして農業を変えていくための取り組みを続けていこうと思います。
あごだしで食卓に「おいしい」と「笑顔」を届けてきた野見山社長が、人生をかけて挑戦している有機栽培農業。今回の取材で、野見山社長の挑戦がいかに尊く、そして難しいことなのかを感じることができました。
井筒屋では生産者の声をお客様に届けるのはもちろんのこと、ご購入いただいたお客様からの声を生産者に届けることも、取り組みを応援する形の一つだと改めて思いました。
〈味の兵四郎〉 あご入兵四郎だし
詳しくはこちら
〈味の兵四郎〉 あご入減塩だし
詳しくはこちら
〈味の兵四郎〉 えろーうもおてごめんつゆ(360ml)
詳しくはこちら
【サステナブルピープルVol.11】
ワクワクする”楽しさ”を大切にしながら、
課題解決向けて挑み続ける
〜株式会社西原商事ホールディングス
常務取締役 成田詩歩さん
Category
Floor
Search
Monthly Archive
Recent Entries
- 【9月2日週の食品催事☆】人気の旬のおいしさや秋を感じる多彩な美味が登場し、おせちのご予約も始まりました♪
- 【9月2日週の小倉井筒屋♪】お待ちかねの大人気催事〈愛の大バザール〉がスタート!館内は少しずつ素敵な秋の装いに☆
- 【サステナブルピープルvol.12】有機農法を実践しながら、農業に新たな道標を作りたい〜株式会社兵四郎ファーム 代表取締役社長 野見山正煇さん
- 【サステナブルピープルvol.10】“北九州の味”を絶やすことなくつなげていく〜 株式会社ごとう醤油 代表取締役 五嶋 隆二さん
- 【サステナブルピープルvol.11】ワクワクする”楽しさ”を大切にしながら、課題解決向けて挑み続ける〜株式会社西原商事ホールディングス 常務取締役 成田詩歩さん